「時そば」の面白さは、あらすじそのものより“一文ごまかす仕組み”にあります。けれど初見だと、なぜ得をして、なぜ真似すると損をするのかが少し分かりにくい。
そこで本記事では、『時そば』のあらすじを3分で整理したうえで、トリックの核心を図解イメージでスッと理解できるように解説します。
『時そば』あらすじを3分解説【結末ネタバレあり】
『時そば』は、賢い男の「成功」と、それを真似した男の「失敗」を並べて笑いを作る二部構成の滑稽噺です。

登場人物
- 一人目の客(賢い男):手口を成功させる
- 二人目の客(真似する男):表面だけ真似して失敗する
- そば屋の主人:時刻を答える
あらすじ(流れ)
- 【成功パート】
夜更け、屋台のそば屋で一杯16文のそばを食べた男が、代金を1文ずつ数え始めます。
「一、二、三、四、五、六、七、八…」と数えたところで、ふと止めて主人に聞きます。
「おい、今何時(なんどき)だい?」
主人が「へい、九つでございます」と答えると、男はうなずいて続きを言います。
「十、十一、十二、十三、十四、十五、十六」
——つまり九文だけを“飛ばして”支払いを終え、去っていきます。 - 【失敗パート】
それを見ていた別の男が「なるほど、あれで一文ごまかせるのか」と翌日真似をします。
同じように「一〜八」と数え、得意げに「今何時だい?」と聞く。
ところが主人は「へい、まだ四つでございます」。
男は流れを崩せず、続きのつもりでこう数えます。
「五、六、七、八、九、十、十一、十二、十三、十四、十五、十六」
——結果、今度はごまかすどころか余計に払ってしまうのです。
なぜ一文ごまかせる?トリックの仕組みを「九つ」で理解する
結論から言うと、『時そば』のトリックは江戸の時刻の呼び方が前提です。

ポイント:江戸の時刻は「九つ・八つ・七つ…」
江戸時代の時刻の呼び方では、夜の時間帯に「九つ」という呼称が出てきます。ここがミソです。
- 成功パート:主人の答えが「九つ」→男は次を「十」から再開できる
- つまり:「九」を言わずに済む=九文を“抜ける”
男がやっていることは単純で、数える流れを“時刻の数字”で上書きしてしまう技です。数字の連続が自然に見えるよう、わざと質問を挟んでいます。
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オチ解説:なぜ真似した男は損をするのか?
失敗パートの笑いは、「手順は真似たが、条件を理解していない」ことにあります。
成功は“九つ”だったから成立した。ところが失敗は、返ってきたのが“四つ”だった。

比較表:成功と失敗の分かれ道
| 一人目(成功) | 二人目(失敗) | |
|---|---|---|
| 時刻の答え | 「九つ」 | 「四つ」 |
| 支払い再開 | 「十」から | 「五」から |
| 実際の支払い | 1〜8(8文)+10〜16(7文)=15文 | 1〜8(8文)+5〜16(12文)=20文 |
| 結果 | 1文得 | 4文損 |
つまり二人目は、「四つ」と聞いた直後に“続き”として「五」から始めたせいで、本来の16文を超えて払ってしまう。賢いふりの空回りが、そのままオチになります。
まとめ:『時そば』は「条件つきの言葉トリック」
- あらすじ:成功→失敗の二部構成で笑いを作る
- 仕組み:「九つ」だから「十」へ自然につなげられる
- オチ:条件(時刻)が違うのに手順だけ真似して損をする

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