『五目講釈』は、勘当された若旦那が講釈師になったつもりで、赤穂義士伝から芝居・講談の名場面までごちゃ混ぜに語る、聞きかじりの芸を笑う落語です。
読み方は「ごもくこうしゃく」です。別題として『居候講釈』『端物講釈』と呼ばれることがあります。
落語『五目講釈』のあらすじを知りたい人は、まず「居候の若旦那が、働く代わりに講釈師になると言い出し、長屋の人々の前ででたらめな講釈を披露する噺」と押さえると分かりやすいでしょう。
この記事では、『五目講釈』のあらすじ、登場人物、サゲ「調合してある」の意味、別題『居候講釈』との関係、講談や芝居を知らない初心者でも楽しめる見どころを3分で整理します。
落語『五目講釈』とは?若旦那のでたらめ講釈を楽しむ滑稽噺
『五目講釈』は、道楽が過ぎて勘当された若旦那が、居候先で「講釈師になる」と言い出す滑稽噺です。
講釈とは、現在の講談につながる語り芸のことです。歴史や武勇伝、忠臣蔵、武将の物語などを、張り扇で釈台を叩きながら調子よく語ります。
ところが『五目講釈』の若旦那は、まともに修業した講釈師ではありません。知っている話をそれらしく並べているだけなので、赤穂義士伝のはずが、別の芝居や講談の登場人物へどんどん脱線していきます。
題名の「五目」は、五目寿司のように「いろいろなものが混ざっている」という意味で見ると分かりやすいです。つまり『五目講釈』とは、あれもこれも混ざった、ごちゃ混ぜ講釈の噺なのです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 演目名 | 五目講釈 |
| 読み方 | ごもくこうしゃく |
| 別題 | 居候講釈、端物講釈など |
| 分類 | 滑稽噺・若旦那勘当もの・講釈パロディの噺 |
| 主な登場人物 | 勘当された若旦那、居候先の親方または大家、その女房、長屋の人々など |
| 主な題材 | 赤穂義士伝、歌舞伎、講談、芝居の名場面、時代物や世話物の混線 |
| 聴きどころ | 若旦那のもっともらしい語り口、話が崩れていく面白さ、最後の「調合」のサゲ |
落語『五目講釈』のあらすじを3分で解説【結末ネタバレあり】
『五目講釈』は、居候の若旦那が講釈師気取りで一席語るものの、話の中身が芝居や講談の名場面でごちゃ混ぜになる噺です。
ある生薬屋の若旦那が、道楽のしすぎで親から勘当されます。生薬屋とは、薬の原料になる草根木皮などを扱う商売です。
若旦那は行き場がなくなり、親方または大家の家に居候します。ところが、居候の身でありながら、朝から寝て、食べて、ぶらぶらするばかり。家の女房はたまったものではありません。
困った親方が「何か商売でも始めたらどうです」とすすめると、若旦那は「講釈師になりたい」と言い出します。しかも、弟子入りなど必要ない、自分はすでに名人だと言い張ります。
若旦那は菓子代まで出して、長屋の人々を集めさせます。夜になると、若旦那の講釈会が始まります。若旦那は張り扇を構え、一人前の講釈師のように赤穂義士の討ち入りを語り始めます。
最初は調子よく聞こえます。ところが、しだいに話が怪しくなります。赤穂義士伝を語っていたはずが、安宅の関、熊谷陣屋、天一坊、政岡、白井権八、切られ与三郎など、まったく別の芝居や講談の人物が入り込んできます。
聴いている長屋の人々は、最初こそ感心していますが、だんだん首をかしげます。これは赤穂義士なのか、歌舞伎なのか、講談なのか、もう誰にも分かりません。
最後に誰かが「あれは講釈師かい」と聞きます。すると別の者が「横町の薬屋のせがれだ」と答えます。そこで「道理で、講釈がみんな調合してある」と落ちます。
『五目講釈』の起承転結
| 流れ | 内容 | 見どころ |
|---|---|---|
| 起 | 道楽で勘当された若旦那が、親方または大家の家に居候します。 | 若旦那勘当ものらしい、甘さと世間知らずが出発点になります。 |
| 承 | 働くように促されると、若旦那は講釈師になると言い出し、長屋の人々を集めます。 | 修業前から名人気取りになる自信過剰ぶりが笑いになります。 |
| 転 | 赤穂義士伝を語るはずが、芝居や講談の名場面が次々に混ざっていきます。 | 語り口は立派なのに、中身がどんどん崩れるところが聴きどころです。 |
| 結 | 若旦那が薬屋のせがれだと分かり、「講釈がみんな調合してある」と落ちます。 | 薬の調合と、ごちゃ混ぜ講釈が一つの言葉で結びつきます。 |
『五目講釈』の登場人物は、若旦那の居候ぶりで見る
『五目講釈』の中心人物は、勘当された若旦那です。若旦那とは、商家の息子を指す言葉で、落語では甘やかされて育った道楽者として出ることがよくあります。
若旦那は、悪人ではありません。ただし、働く覚悟がなく、何かを本気で修業する辛抱もありません。講釈師になると言い出すのも、芸への敬意というより、人前で気持ちよく語りたいという気分が大きいのです。
親方または大家は、若旦那を預かっている人物です。義理があるため追い出すこともできず、女房からは文句を言われ、板挟みになります。
長屋の人々は、若旦那の「講釈会」に集められる観客です。彼らの反応があることで、でたらめ講釈の可笑しさがはっきり見えてきます。
| 登場人物 | 役割 | 聴くときの注目点 |
|---|---|---|
| 若旦那 | 勘当されて居候になり、講釈師気取りで一席語る人物 | 自信満々なのに中身が混線していくところが笑いになります。 |
| 親方・大家 | 若旦那を預かり、働くように促す人物 | 義理と迷惑の板挟みになる立場です。 |
| 女房 | 居候の若旦那に不満を持つ人物 | 生活感のある文句が、若旦那の甘さを際立たせます。 |
| 長屋の人々 | 若旦那の講釈を聞く観客 | 最初は感心し、途中から混乱する反応が見どころです。 |
| 講釈の中の登場人物 | 赤穂義士や歌舞伎・講談の人物たち | 本来は別々の物語なのに、若旦那の口からごちゃ混ぜに出てきます。 |
『五目講釈』のサゲ「調合してある」は薬屋の若旦那だから効く
『五目講釈』のサゲは、「講釈がみんな調合してある」です。
調合とは、薬の材料を混ぜ合わせることです。若旦那の家は生薬屋なので、「調合」という言葉が商売に結びつきます。
若旦那の講釈は、赤穂義士伝を語るはずなのに、安宅の関、熊谷陣屋、天一坊、政岡、白井権八、切られ与三郎などが次々に混ざります。つまり、いろいろな物語が薬のように混ぜ合わされているのです。
そこで、「薬屋のせがれだから、講釈まで調合してある」と落ちます。人物の出自と、でたらめ講釈の混ざり具合が、最後に一つの言葉で結びつくわけです。
このサゲは、講談や芝居の細かい知識がなくても楽しめます。「本来は別々の話が、若旦那の中でごちゃ混ぜになっている」と分かれば、十分に面白さが伝わります。
『五目講釈』の「五目」は、ごちゃ混ぜという意味で見る
『五目講釈』の「五目」は、五つの目という意味ではなく、いろいろなものが混ざっている状態を表す言葉として見ると分かりやすいです。
五目寿司や五目そばのように、複数の具材が入ったものを「五目」と呼ぶことがあります。落語の『五目講釈』も、それと同じく、いろいろな話が入り混じった講釈という意味合いです。
若旦那の講釈には、講談、歌舞伎、浄瑠璃、忠臣蔵、時代物、世話物が混ざります。本人は堂々と語っていますが、聴いている側からすれば、筋がぐちゃぐちゃです。
ここが『五目講釈』の大きな魅力です。正しい講釈を聞かせる噺ではなく、「間違っているのに、語り口だけは妙に立派」というおかしさを楽しむ噺なのです。
| 混ざる要素 | 本来の意味 | 噺での働き |
|---|---|---|
| 赤穂義士伝 | 忠臣蔵に関わる討ち入りの物語 | 若旦那の講釈の出発点になります。 |
| 安宅の関 | 義経・弁慶に関わる名場面 | 赤穂義士伝から突然ずれる代表的な脱線です。 |
| 熊谷陣屋 | 平家物語・歌舞伎に関わる名場面 | 時代も人物も違う話が混ざる可笑しさを作ります。 |
| 政岡・白井権八・切られ与三郎など | 歌舞伎や講談で知られる人物・題材 | 若旦那の記憶の中で、芝居の名場面が無秩序に並びます。 |
| 調合 | 薬を混ぜ合わせること | 生薬屋の若旦那と、ごちゃ混ぜ講釈を結ぶサゲになります。 |
『居候講釈』『端物講釈』との関係を整理
『五目講釈』は、別題として『居候講釈』と呼ばれることがあります。これは、若旦那が居候の身であることに焦点を当てた題名です。
居候とは、他人の家に身を寄せ、食事や寝場所の世話になる人を指します。この噺の若旦那はまさにその立場です。働かずに世話になっているため、親方や女房に迷惑がられます。
『端物講釈』という呼び方もあります。長大な本格講釈ではなく、半端に覚えた講釈を寄せ集めたような印象を示す題名として見ると分かりやすいでしょう。
演目整理では、『五目講釈』が「若旦那の居候」と「でたらめ講釈」を扱う噺かどうかを確認すると、類題との混同を避けやすくなります。
| 題名 | 焦点 | 初心者向けの整理 |
|---|---|---|
| 五目講釈 | 講釈の中身がごちゃ混ぜになること | 演目の笑いの中心を表す題名です。 |
| 居候講釈 | 若旦那が居候先で講釈師気取りになること | 発端の状況を表す別題として見ると分かりやすいです。 |
| 端物講釈 | 半端に覚えた講釈を寄せ集めたような印象 | 本格講談ではなく、聞きかじりの芸であることを示す題名として整理できます。 |
『五目講釈』の面白さは、内容より語り口が立派なところ
『五目講釈』の若旦那は、講釈の内容を正しく理解していません。けれど、語り口だけは妙に堂々としています。
ここが大きな笑いです。張り扇を叩き、声を張り、いかにも講釈師らしく語る。ところが中身を追うと、赤穂義士の話が安宅の関へ飛び、そこから別の芝居へ移っていきます。
聴き手は、「この人は何を語っているのだろう」と思いながらも、その勢いに引っ張られます。落語では、正しい説明よりも、間違っているのに妙に力がある語り口が笑いになることがあります。
『五目講釈』は、まさにそのタイプの噺です。内容は崩れているのに、本人だけは名人のつもり。その自信と中身のずれが、最後まで可笑しさを生みます。
芝居や講談を知らなくても『五目講釈』は楽しめる
『五目講釈』には、赤穂義士伝、安宅の関、熊谷陣屋、政岡、白井権八、切られ与三郎など、古い芝居や講談の題材がたくさん出てきます。
これだけ見ると、初心者には難しそうに感じるかもしれません。しかし、すべての元ネタを知っていなくても、噺の基本は楽しめます。
重要なのは、「本来は別々の話が、若旦那の中でごちゃ混ぜになっている」と分かることです。たとえば、歴史ドラマ、刑事ドラマ、アニメ、時代劇、恋愛ドラマが一つの話に混ざってしまうようなものです。
演者によっては、時代に合わせて現代の人物や流行語を入れることもあります。講釈の中身が固定されすぎず、演者の遊びが入りやすいところも、この噺の魅力です。
若旦那勘当ものとして見ると、発端が分かりやすい
『五目講釈』の前半は、落語によくある「若旦那勘当もの」の型を持っています。
若旦那勘当ものとは、商家の息子が道楽をしすぎて親から勘当され、居候先や奉公先で騒動を起こす噺のことです。若旦那は世間知らずで、働くことへの覚悟が薄く、妙に自信だけはあります。
『五目講釈』でも、若旦那は本気で修業する前から、自分は名人だと思っています。弟子入りをすすめられても、すぐ独演会を開こうとするところに、甘やかされた若旦那らしさが出ています。
この人物像を押さえると、でたらめ講釈もただの間違いではなくなります。若旦那の世間知らず、聞きかじり、自信過剰が、講釈という形で一気に表に出るのです。
よくある疑問:『五目講釈』を聴く前に知っておきたいこと
『五目講釈』の読み方は何ですか?
「ごもくこうしゃく」と読みます。いろいろな話がごちゃ混ぜになった講釈、という意味で覚えると分かりやすいです。
『五目講釈』はどんな落語ですか?
勘当されて居候になった若旦那が、講釈師になると言い出し、長屋の人々の前で赤穂義士伝を語り始めます。しかし、話の中に歌舞伎や講談の人物が次々に混ざり、最後は「講釈が調合してある」と落ちる滑稽噺です。
『居候講釈』とは同じ落語ですか?
同じ噺、または同じ系統の別題として見てよいでしょう。『居候講釈』は、若旦那が居候先で講釈師気取りになる発端に焦点を当てた題名です。
『端物講釈』とは何ですか?
『五目講釈』の別題として挙げられることがあります。長大な本格講釈ではなく、半端に覚えた講釈を寄せ集めたような印象を示す題名として見ると分かりやすいでしょう。
講釈とは何ですか?
講釈は、現在の講談につながる語り芸です。歴史や武勇伝などを、張り扇で調子をつけながら語ります。『五目講釈』では、その講釈を若旦那がまねて失敗します。
サゲの「調合してある」とはどういう意味ですか?
若旦那の家が生薬屋で、薬を混ぜることを調合と言うためです。講釈の中身も、赤穂義士伝や歌舞伎や講談がごちゃ混ぜになっているので、「薬屋のせがれだけに、講釈も調合してある」と落ちます。
芝居や講談を知らないと分かりにくいですか?
細かい元ネタを知っているとさらに楽しめますが、知らなくても大丈夫です。別々の話が一つに混ざってしまう可笑しさを押さえれば、噺の流れは十分に分かります。
演者によって内容は変わりますか?
変わります。講釈の中に何を混ぜるかは、演者の工夫が出やすい部分です。古典的な芝居や講談だけでなく、時代に合わせた人物や流行語を入れる型もあります。
初心者はどこに注目して聴けばよいですか?
若旦那の語り口に注目してください。最初は堂々としているのに、話が少しずつ別の物語へずれていきます。本人の自信と、内容のめちゃくちゃさの落差が聴きどころです。
『五目講釈』は、文章で読むと「話が混ざる噺」と整理できます。けれど音で聴くと、張り扇の調子、若旦那の得意げな声、長屋の人々の戸惑い、そして最後の「調合してある」で空気がほどける呼吸がよく伝わります。
講談や芝居のパロディを落語で味わいたい人は、音源や高座で聴くと、この噺の勢いが分かります。
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まとめ:『五目講釈』は、若旦那のでたらめ講釈を笑う落語
『五目講釈』は、勘当されて居候になった若旦那が、講釈師になると言い出し、長屋の人々の前でごちゃ混ぜの講釈を披露する滑稽噺です。語り口は立派なのに、中身は別々の芝居や講談が混ざっていく。そのずれが最大の面白さです。
- 『五目講釈』は「ごもくこうしゃく」と読む落語です。
- 別題として『居候講釈』『端物講釈』があります。
- 道楽で勘当された若旦那が、居候先で講釈師になると言い出します。
- 赤穂義士伝を語るはずが、別の歌舞伎や講談の人物が次々に混ざります。
- 題名の「五目」は、いろいろなものがごちゃ混ぜになっている意味で見ると分かりやすいです。
- サゲは、生薬屋の若旦那にかけて「講釈がみんな調合してある」と落ちます。
- 聴くときは、若旦那の堂々とした語り口と、話の中身が崩れていく落差に注目すると楽しめます。
『五目講釈』は、講談や芝居をよく知る人にはパロディとして、初心者には「知ったかぶりの芸が崩れていく噺」として楽しめます。中身はめちゃくちゃなのに、語りだけは名人風。その可笑しさに、落語らしい人間味があります。
参考文献
- 東大落語会 編『落語事典 増補』青蛙房
- 古典落語『五目講釈』『居候講釈』関連の速記・演目解説資料
- 講談・講釈と落語のパロディ演目に関する資料
- 若旦那勘当もの・居候噺に関する古典落語資料
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